差出人 : "nakao chisato" <sonimage@rc4.so-net.ne.jp>
宛先 : "首藤郷"<kyo_bell@hotmail.com>
件名 :大切なのは、
送信日時 : 1999年 10月 27日 (水) 4:30 AM
大切なのは躓くこと、
地面に顔を埋めるまでに身体を掠めて消える大気のスピードに恐怖すること、
痛くても平気な風体を装うまでの僅か数秒分の一の瞬間に躓いた石の正体を見極めること、
躓きの石に数万年前の雲母のかけらが結晶しているだなんて、
接写専用の望遠レンズを覗き込んで確認すること、
やおら空を見上げて目眩はしないかと見上げた空に浮かぶ雲のかけらにも小石の雲母が光っていて驚くこと、
なのに道行く人の心配にならないように平気な風体を装って起きあがること、
それでも痛いと確認すること、
歩を進めながら先ほどの石の姿を追憶に浸して時に折り幾度となく反芻すること、
大切なのは躓くこと、
幾度となく小石の数だけ躓くこと、
広角レンズを覗き込むように反省なく躓く自分を風景の一点として発見して笑うこと、
それでも小石ばかりに躓いている自分に誇りを持つこと、
惨めにこびりついた埃を振り払うことなく平気な風体を保つこと、
その実は薄汚れて滑稽な間抜けとして生きること、
空には雲一つなく追憶に浮かべた雲母さえ今日の空には跡形もなくそれが世界と知ること、
ぼくはすべてを大雑把にしてしまうなにごとも嫌いです。
すべてを大雑把にして違うものを同じものだと強弁するひとが戦略として言葉を用いる様が嫌いです。
等号記号としても作用する言葉の怖さにきちんと恐怖します。
幾度となく恐怖します。
怯えこそがいまは一瞬歩みを止めて考えなくてはいけないときと知らせてくれます。
躓きの石に似ていてしかし違います。
今日この日のこの国の派遣労働の実態は犯罪まがいの仕事ばかりです。
派遣先の企業は派遣元の使い捨てのスタッフに責任をなすりつけたいのでしょう。
生活のためと割り切っても割り切れないものに身を投じては今日も転びました。
つまり間抜けにて性懲りもなく躓いたのです。
この世界で割り切れないものはすべて小石の形に結晶して転ぶひとを待っています。
大切なのは小石の数だけ躓くこと、
大切なことは大切なこと、
すべて大切だと小石の数だけ躓いた小石の形状をひとつひとつ丹念に観察記録すること、
すべて躓くための石、
すべて躓くための意志、
意思、
追記
あららとまるで似たようで違うメールが三通。送信時刻の違いをご参照ください（マックにて作成したので文字化けが心配です）。いずれにしても面倒くさいものでごめんなさい。詩作に試作は許されないのにね。
オフィス・タワーは分かった？ 合流できなくてごめんなさい。異様に疲れる異様な仕事でした。
市民セミナーが初回のような大雑把な内容でないことを切に願ってます。再び合流できなくてごめんなさいと添えておきます。
お詫びとして。
今日へ郷こそへ
1999年 10月 27日 (水) 4:30 AM
なかおちさと
nakao chisato et sonimage groupement
sonimage@rc4.so-net.ne.jp
data
toriwomita
nakao chisato (g/vo.), kikuchi akira (b.), yamazaki iwao (dr.)
live recorded at PENGUINHOUSE Koenji oct.12.2002
effects
by nakao chisato at studio sonimage dec.26.2002
